「治験」とは、新しい薬を開発するための「臨床試験」のことをいいます。
薬は製薬会社の研究によって作られていますが、何千何万という薬の卵の中から1つの薬が誕生するまでに、10年から20年の月日がかかります。最終的に私たちが病気になったときに安心して飲んだり、注射を受けたりできるためには薬の有効性や安全性などを確認する必要があります。
新しい薬の誕生には、治験に参加していただく患者さまのご協力が不可欠なのです。
最近は改善されつつありますが、日本における新薬の開発は、先進国の中では遅れていました。
そのため、欧米で使用されている薬でも、日本では使うことができないこともあります。
なぜ、日本での治験が遅れているかというと、治験に対する理解の不足、日本と欧米の文化や制度の違い、国民性によるところが大きいようです。
例えば、欧米においては、よりよい薬を後世に残すためならば、「私の病気を活用してください」といったボランティア精神が強いのですが、日本においては、「誰かに使って良く効くか、副作用がないかを確かめてから使う」という保守的な風潮がありました。
現在では、世界同時開始の治験も増えてきており、最新の薬を使うことにはなりますが高価や副作用が未知の場合もあります。
近畿中央病院の治験管理室では、治験に対する意識を向上させ、その安全性を追求し、よりよい薬を使う機会を提供してまいります。地域の中核病院として積極的に治験に取り組むことを重要な役割だと考えています。
治験に参加するか否かは、医師・治験コーディネーターから詳しい説明を受けた後、患者さまご自身が決められるもので、決して強要されるものではありません。
また、断ったからといって、不利益な扱いを受けることはありません。
ただし、より良いお薬を後世に残すわけですから、厳密な種々の検査を行い、治験に参加できるかどうかを専門的に判断します。
せっかく治験に協力しようと思われても、参加できない場合もあります。
治験はまだ承認されていない段階の薬を用いた試験ですから、慎重に行なわれます。
例えば、国内はもちろんのこと、海外において、治験を行っている薬の候補物質(まだ承認されていないので、「候補物質」といいます)で何か重大なことが起こったならば、直ちに中止する手はずになっています。
また、病院で治験を行うに当り、参加していただく方が不利益になっていないか等を治験審査委員会(一種の倫理委員会)で慎重に審議した後、治験を実施します。
もしものことに備えて、補償や賠償保険が掛けられていていますし、夜間や休日でも緊急連絡対応がとれるようにしています。
治験の種類や治療を行う施設により幾分か異なりますが、治験に参加していただくと、一般に次のメリット、デメリットがあります。
患者さまと医師、さらには製薬会社との橋渡し役となり、試験の円滑な運営をサポートする専門的なスタッフを治験コーディネーター(CRC)と言います。
CRCは看護師、薬剤師、臨床検査技師など、看護や薬や検査の知識を持つ経験者がつくケースが多く見られます。
製薬会社が新薬を開発する治験とは別に、いくつかの施設の医師が共同で新しく改良した薬や様々な薬の組み合わせの試験を行い、これまでの治療と比較検討する試験等を医師主導の臨床研究と言います。
医師主導の臨床研究は当院の治験審査委員会で安全性や試験の妥当性を十分に審議したうえで行います。
医師主導の臨床研究はどなたでも参加できるわけではありません。
試験により厳密な参加基準が設けられています。
担当医師が臨床試験の説明させていただき、ご納得していただいてから始めさせていただきます。
試験で良好な結果が得られると、今後その治療法が標準的な治療法となる場合もあります。